久しぶりに映画の感想です。今回はとくに予備知識なく、たまたま目に付いたのを借りたのですが、ちょっと異色の映画でした。結合体双生児で伝説のロックミュージシャンのドキュメンタリー、という設定のフィクション。美形のフリークス、70年代ブリティッシュロックとキャッチーな題材です。原作はSF作家として有名なブライアン・オールディスの小説だそうです。
個人的にはフリークスもロックも格別の思い入れはないんですが、主役の双子はすごく魅力的でした。ミュージシャンのドキュメンタリー風の撮り方なので、全体の流れは正直手垢がついてる感がありますが、二人はヤリ手の音楽プロデューサーに「買われて」ミュージシャンに仕立て上げられるので(父親が莫大な金額と引き替えに二人を引き渡す)、大昔ならサーカスに売られるみたいなもの。「搾取されるフリークス」という側面が折々出てきます。(『エレファントマン』とは違うアプローチですが…)なので、単にロックミュージシャンもののパロディという以上に、物語は補強されてる感じがします。
ただ、この「ドキュメンタリー風」の撮り方が…個人的には他の作品でもイマイチ相性がわるいんですよねえ…。「これが普通の撮り方だったらもっと入り込めただろうになあ」、とすごく残念。なぜだろうなあ…。なにか、フィクションを楽しむ時って、頭の中に「もう一つのリアリティ」を作って見ている気がするんですが、自分はドキュメンタリー風の体裁になると、その「もう一つのリアリティー」をうまく構築できないようです。普通のフィクションよりウソくさく見えてしまうんですよね…「それはそれとしてフィクション」、という楽しみ方がどうもできない。文字だったらいける気がするんですが。(^^;)
それと、題材になってる双子の設定がかなり「盛ってる」部分があるので(結合のうえにさらに…な設定があります)、撮り方のトーンとイマイチ合ってないかなあ…。(でも、たぶんその「違和感」そのものが、この映画のオリジナリティーでもあり、魅力でもあるんだと思うんですが)
冒頭からわざと顔の売れてる俳優さんを出しているので(ジョナサン・プライスと『時空刑事』のジョン・シム)、最初から「これはフィクションですよ」と言っているわけですが、「ドキュメンタリー風の演技」や「ドキュメンタリー風の編集」に、いちいち現実に引き戻されてしまうので、個人的にはつくづく惜しかったです。
ともあれ、そこを割り引けば(印象から割り引くのは難しいですが)、なかなか魅力的なフィルムだと思います。異色であることは確か。主役を演じているのは双子の俳優さんなんですが、彼らがほんとに魅力的で、二人がくっついてナイーブにグズっているだけでも腐属性には目の保養です。しかもロックミュージシャンですからセクシーなステージも見られますし。結合体といってもおなかのあたりに太い帯状の皮があってそこでつながってるだけなので、見た目にはあまり異様さはないのですが…この手の題材を見るときの「試される感じ」と、同時にその異様さがセクシーさを底上げしてる感じ、70年代風俗のくすぐったさ…などなどがないまぜになって、独特の味がありました。
脇役の人たちもすごくよくて、特に「最低の男」とみんなから言われている(笑)双子を直接世話する(というか暴力までふるう)マネージャーがすごくツボでした。ショーン・ハリスという人で、痩せた犬みたいですごくセクシー。(IMDbを見たらやっぱり他の映画で脱いました。でしょうねえ…(笑))
架空の映画でその双子を扱った、という設定で、映画監督のケン・ラッセルも自分自身として顔を出しています。特典映像で入っている未公開シーンには、原作者のブライアン・オールディスのインタビュー(という設定のシーン)も。実際にオールディスの小説が原作ですが、映画はその題材になった双子は実在した、という枠組みなのでややこしい遊びです。(笑)しかもオールディス自身が四つ子という設定になっていて、四人の「ブライアン・オールディス」が出てきます。(顔はみんな違って、なぜか名前がみんな同じ!(笑))…さすがに遊びすぎなので、本編に入れるのは無理だったと思いますが、クレジットによると四人のうちの一人は本物のオールディス。…この手のお遊び感覚をわかった上でもう一度見てみると、また違う楽しみ方ができるかもしれません。
個人的にはやはりドキュメンタリー風の撮り方がネックだったので、原作のほうで読んだらもっと違和感なく入り込めそうだな、と思いました。そのうちトライしてみたいですー♪