イベント参加予定

【イベント参加予定】2024/5/19 文学フリマ東京38 / 2024/5/26 COMITIA 148

2021/03/28

『ファースト・コンタクト』再見(と『スター・トレック:ピカード』見始め)

数日前に、久しぶりに地元のレンタル店をぶらついてたら、『スター・トレック:ピカード』が新作で入荷しているのを発見。1巻目を衝動的に借りてきました。作品の存在はパトリック・スチュワートご本人のツイートなどで知っていたんですが、なぜかネトフリ(契約してません)だと固く思い込んでました。アマゾンプライムだったとは……! 解約してたプライムに慌てて再登録し、3話以降も見始めました。(犬の名が……やっぱリタイア後も日常的にそう呼びたかったのね……(笑))

まだ見始めたばかりなのでそちらの感想はあとにしますが、むしろ昔の作品のほうを見返したくなってしまいました。(笑)それで一番ハマってた頃に買ったピカード映画三本セットを昨日の朝掘り出し、『ファースト・コンタクト』再見とあいなりました。 

ホコリをかぶってたピカード艦長三本セットを救出。一番好きなのは『ファースト・コンタクト』ですが、他のもTVシリーズも地すべり的に見返しそうな予感がします……(笑)

ああ、やはり面白い! てかもう、ジェリー・ゴールドスミスの音楽だけでも胸がいっぱいになります。ストーリーもキャストの演技も、改めてうまいなあと……当時スタトレ映画では最高の出来と言われていたようですが、今見てもやっぱりナンバーワンではないでしょうか。監督してるのも「ナンバーワン」=副長役のジョナサン・フレイクスですしね❤(笑)

(※ピカードは副長を「Number one」と呼びます。英国海軍の俗語だそうです。「Make it so.(そうしたまえ/実行せよ)」「Engage.(発進)」なんかと並ぶ彼の特徴的な台詞で、ファンはこれを聞くと盛り上がってしまいます♪(笑))

…なーんてくだらないこと言いたくなるほど懐かしくって、見終わったあと上機嫌になってしまいました。ちょっと褒めちぎらせてください。スタトレの基本的設定は冗長なのですっ飛ばしますが、未見の方のために少しだけ「出来事の」ストーリーを書きますと……

時は24世紀。宇宙艦隊のピカード艦長率いるエンタープライズE号は、地球に攻めてきたボーグという機械化生命体と戦い、ボーグ・キューブ(ボーグの特徴的なキューブ型構造物)を破壊する。(ここまでに至るシークエンスで、艦長がボーグに対して抱えるトラウマをサクッとわからせてくれます)キューブから逃げたボーグの球体を追ったエンタープライズE号は、球体のタイムトラベルに巻き込まれて21世紀に飛ばされる。そこは第三次世界大戦後の地球で、初めてのワープ飛行が行われ、惑星連邦が地球を認識する契機となる「ファースト・コンタクト」の前日。人口はほとんどボーグになっていた。ボーグによって変えられた地球の歴史を元に戻すべく、ピカードたちの闘いが始まる――(と予告編風に☆)

書き出してみるとものすごく情報量が多いんですけど、すべて映像で(しかも面白く)「見せて」しまう手際の良さといったら! 背景設定を説明っぽくなく伝えることは常に課題だと思いますが、この映画はそこが見事です。おそらくシリーズのファン以外の方にも「自然に話がわかる」ようになっていると思います。

最初の艦長の目のアップからのとんでもない引きシーンは、今見ても度肝を抜かれますし、同時にすごくたくさんの情報を「見せて」くれます。そしてかつてボーグに同化されたピカードがどんな感情を持っているかも雄弁に語ります。それをどう乗り越えるか、という彼の心理の流れが、映画の裏の(というか真の)テーマであり、見ているこちらも自分の身に重ねて見られるところだと思います。

そしてファンへのサービスというか、シリーズを踏まえた細部のアレコレがてんこ盛り。ボーグの不気味なビジュアルや戦闘の凄惨な映像もありますが、「楽しい」映画でもあります。ラストのシークエンスはシリーズのファンにとって「ああ、ここにつながるのか!」という感動がありました。

監督のジョナサン・フレイクスは、副長ライカ―役としてもハンサムで恰幅がよくて「ああ、男に生まれ変わったらああなりたい!」と本気で思う(笑)素敵俳優さんなんですが、あまりに監督作が見事だったので、今何をしてらっしゃるのかなーとプロフィールを見てみたら……やはりというか、ライカ―役を除くとその後は監督メインですね。そうそう、人間版(?)『サンダーバード』もこの方が監督だったのを思い出しました!(個人的には楽しめた一本でした。ポップなテーマ曲も気に入ってサントラ買ったくらいです❤)

今回は、たぶん10年くらい見てないんじゃないかってくらいの再見で、いい塩梅に細部を忘れていたのですごく楽しめました。じつは再見したいと思った時に、「タイムトラベル+ワープ開発の話」と「ボーグクイーンの話」が頭の中でつながらなくて、「あれ? じゃあボーグクイーンが出てきたのはどれだったっけ?」とか思ってしまい……ああ、やばいぞ。(^^;)しかしなんててんこ盛りな映画だったんだろうと思います。

*       *       *

…スター・トレックは、このジャン=リュック・ピカード艦長のシリーズ、TNG(「ザ・ネクスト・ジェネレーション」。邦題は「新宇宙大作戦」)でハマりました。その後遡ってオリジナルのスター・トレックもレトロ感を楽しみ、そのあとのシリーズもちらりと見てみましたが、やはり自分はピカードのシリーズがしっくりきます。

TNGで御多分に洩れずパトリック・スチュワートのファンになり、短期間ですがファンクラブに入って、これまでにただ一度のイギリス旅行は彼の舞台鑑賞とファンクラブのギャザリングのためでした。振り返ると、英語の翻訳に挑戦したきっかけもTNGの英語ファンフィクを友人に読ませるためだったという……(^^;)。シャーロック・ホームズとTNGがなかったら、今頃まったく違う人生を歩んでいました。確実に。(笑)

…ピカードと言う人は、とても優秀でまさに「理想の上司」なんですが、彼が放り込まれる状況は勧善懲悪では割り切れないものも多く、悩むキャラクターでもあるんですよね。このテーマは時代の影響もあるのでしょうが、独特の魅力を感じます。もちろんパトリック・スチュワートのルックスや美声という要素も欠かせませんが、このドラマからSFという枠を超えた「外交萌え」を知った気がします。

今回はたまたま、最近見ている『町山智弘のアメリカの今を知るTV』でコロナ下のアジア人差別を詳しく知り、来週はこのテーマでジョージ・タケイさんのインタビューを放映、という予告を見た後の鑑賞でした。(タケイさんは最初のスタトレでヒカル・スールーという役をなさった方。日系アメリカ人でゲイでもあり、近年はその関連の人権活動に力を入れていらっしゃいます。個人的には2007年の横浜ワールドコンでサイン&握手会に参加する機会がありまして、お優しかったこと、大きくて温かい手だったことを覚えています。(^^))

アメリカ製ドラマであるスター・トレックが、1960年代に黒人やアジア人をメインキャストに入れ、TNGではさらに理想主義的な価値観を掲げていたことを考えると、今のアメリカの姿は無残に映ります。その後のスタトレ映画や今回の『ピカード』も、『ファースト・コンタクト』の当時と比べるとだんだんダークでシビアな側面に比重が移ってきたように思います。もちろん時代の変化に合わせたもので、昔の映画は今の目で見れば「はあ?」ってところもあるのは事実です。

でも、時代の変化が「そういう方向」に進んできたということ自体、なんとも複雑な感じがします。そんな思いもあってでしょうか、基本的には活劇であるはずの『ファースト・コンタクト』を見ながら、なぜかあちこちで涙が出てしまいました。

ああ、テレビシリーズもやっぱり見直したい……☆

【余談】個人的には「スタートレック」と「・」を入れないほうがなんとなく馴染みます。ググると混在も見られますが、「スター・トレック」のほうが多いようなので、いちおうそちらに修正してみました。うーん、違和感あるけど慣れなくちゃ……(笑)

2021/03/26

(シン・)『ポーの一族』、『薔薇はシュラバで生まれる』感想など

 先日、ものすご~く久しぶりに大型書店(横浜西口の有隣堂)に寄る機会がありまして、これまたもンのすご~く久しぶりに漫画コーナーに行ってきました。特に目的はなかったのですが、なんとなく眺めたくなって。そしたら『薔薇はシュラバで生まれる 70年代少女漫画アシスタント奮戦記』という漫画(絵柄・装丁もちょっと「なつかしい」雰囲気❤)が面陳になっていて、思わず手に取りました。その隣には再開した『ポーの一族』の『ユニコーン』も。なんか年代的に狙い撃ちした面陳だな~と思いましたが(笑)、久しぶりの「まともな」リアル書店参りですし(地元には品揃えが残念なツ☆ヤさんしかないので…)、贅沢をしようという気分になって2冊まとめて購入して参りました。


『薔薇はシュラバで生まれる』と新生『ポーの一族』で最初に買った『ユニコーン』、そして後から順不同で買い足した『秘密の花園』、『春の夢』。


『薔薇はシュラバで生まれる』

まず前者は、サブタイトル通り「70年代少女漫画アシスタント奮戦記」のエッセイ漫画で、著者は笹生那実さんという、ご自身も漫画家でいらした方です。当時はアシスタント専門というより、漫画家さん同士でお手伝いをしたりすることが多かったのですよね。お手伝い先がすごいです。美内すずえ先生、くらもちふさこ先生、三原順先生、樹村みのり先生、山岸涼子先生……それぞれの先生の似顔絵がその先生のタッチに似せて描かれているのもすごい。そしてそれ以外にも、木原敏江先生、萩尾望都先生、鈴木光明先生などなど、さまざまな方が言及されます。(じつは学生時代、鈴木光明先生が渋谷の「花の館ビル」で主催されていた少女漫画教室に通わせていただいておりました。懐かしいです……!)

「シュラバ」の雰囲気は、学生時代の漫画描き仲間の間では憧れさえあったものでした。が、今はそういう目線ではまったくなくなっています。もっとも、「自分には時間に追い詰められての創作活動などできない」と自覚したのはだいぶ昔、アニメーターをやって体を壊した頃のことです。なので、(昔の自分ならしたような密着した感覚でなく)より心理的な距離をとった読み方ができたと思います。でも、本のなかで著者さん自身が樹村みのり先生にいただいたというアドバイスが心に響きました。「あなたは完全主義なところがあるでしょう。そして不完全なものなら描かないほうがマシと思っているでしょう」…活動が漫画であるか否かに関わらず、響く方がたくさんおられると思います。

漫画を描くには商業的な「漫画家」になる以外に道がない、と思い込んでいた頃と比べると、マイペースで好きな作品を作ることができ、発表したり販売したりまでできる今の世の中は夢のようです。この年になってもなんらかの形で自由に創作ができることは(もっとも大量の絵を描く体力はもうないので、小説とイラストになっていますが)つくづく幸せだなあ、なんてことも思いました。


(シン・)『ポーの一族』

さて、次に新生『ポーの一族』。の、コミックス二冊目。じつは連載が再開した時に、舞い上がって掲載誌を買い求めた一人でした。でも絵柄やお話のトーンの変化にちょっと食指が動かなくなって、その後は追っていませんでした。ですが、今回気まぐれに読んだ二冊目で引きずり込まれまして、そのあと地元の書店にあった三冊目の『秘密の花園』、最後に通販で一冊目の『春の夢』、とすぐに買って変則的な読み方をしてしまいました。

でも、3冊の中でぶっちぎりに面白かったのが『ユニコーン』でした! アマゾンのレビューを読み回ったところ、なぜか同士の方が見つからないのですが……まあ、わりとそういうことには慣れてオリマスけれど。あはは。(^^;)

自分が「持っていかれた」のは、エドガーが持つ「鞄」の大ゴマ。これでもうガーンと。他の巻はこの続きが気になって買い集めたようなものです。時系列がランダムな読み切りシリーズなので(もちろんこの順で開示していくことに意図がおありなのだと思いますが)、その顛末はまだ、コミックスになった範囲ではわかりません。これは追うしか。もちろん最初はファルカやブランカの背景もわからなかったので、三冊を読み終えてからの再読時は面白さが倍増していました。音楽がたくさん出てくるので、タイトルでYouTubeを検索して聴いてみたり……ありがたい時代ですね。どれも曲だけは聞き覚えがあり、こういう名前や来歴だったのかー……とわかる楽しみもありました。

絵柄、特にキャラについては、先生自身がだんだん調子を取り戻していらっしゃるように見えます。今回『ユニコーン』を自然に手に取ったのも、表紙の絵が再開当初に比べて昔に近くなり、すごく美しく見えたからです。ただ、昔の「あいまいさの美」が感じられた特徴的な背景処理や、背景に溶け込むような輪郭処理はほぼなく、例えれば昔のポーは詩、新生ポーは散文小説のように感じます。その分、一般的な映画のような「散文的な」映像(単に種類の違いで優劣という意味ではありません)にするなら、新生ポーのほうがやりやすいかもしれません。

『ユニコーン』でキーになるバリーがもう少し美男ならよかったのに……というレビューを見かけました。自分も「んー…」とは思ったんですが、これは超絶美形な設定の兄との対照がありますから、たぶん美男にするとドラマの圧力が下がってしまうんですよね。……でも少女漫画ですから、なんらかの記号として「この人は見た目が美しくない人」とわかれば充分だったかもしれません。

思い出したのが、昔見た『リチャード三世』(せむしで醜いという設定のシェイクスピア劇の主人公)。ルックスで言えばむしろ魅力的なアル・パチーノや山崎努さんが、姿勢と表情で醜さを表現していましたっけ。……とはいえ、絵でそれをやるとなると? …顔に傷をつけるくらいしか思いつきません。いっそ仮面か髪で顔を隠して「想像させる」ってのもありかも。でもそこまで「醜い」わけではないですね、バリーは……不気味なだけで。バリーは顔がコロコロ変わるようにも見えます。少しデッサンがゆがむ感じも。先生の今の絵柄で「美しくない人」を表現するのはかえって難しいのかもしれませんね。ともあれ、まだまだ謎の伏線も多いバリーなので、絵柄の変化/進化も含めてこれからに期待しています♪

(…ええと、ゴメンナサイ、萩尾先生の作品に対して生意気なことを書いてしまって。人様の作品で「こうしたらもっといいのでは」を考えるのって、自分の作品より気楽で頭が柔らかくなるので良い勉強になるんです。先生の年齢を考えたら尊敬しか湧いてこないことも書き添えておきます)

とにかく、絵の雰囲気もあってかSF・ホラー的な方向が以前より強めに出ているのですが、自分は面白く感じました。萩尾先生の作品で一番好きなのが『スター・レッド』なので、SF的な部分を受け入れやすいファンなのかもしれません。(そういえば、絵柄は『スター・レッド』の頃に近い感じがします)ポーやトーマはそのだいぶあとから読んで、もちろん惹きつけられはしましたが、読み返した回数から言うと『スター・レッド』がぶっちぎりです。一方、『残酷な神が支配する』はつらくて読み進められず(正直「どうしてお金を払ってこんなつらい話を読まなきゃいけないんだ」と思ったくらい)、振り返るとこのへんからしばらく離れていました。でも「そこを描ける胆力」が萩尾先生の個性を構成する要素の1つなんでしょうね。

(萩尾先生の作品は大好きで思い入れもあるのですが、上記のように好みと違うものや、単純に縁がなくて読んでいないものもたくさんあります。念のため書いておきますね)


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【後日談・新刊のこと】

今回ご紹介した本は、いずれもアマゾンでは購入しなかったのですが、レビューを読みまくったせいかアクセスしたときに萩尾先生の本の広告が出るようになり、四月に出る新刊の広告が目につきました。漫画ではなく、『一度きりの大泉の話』というエッセイ(?)で、有名な「大泉サロン」についての回想録的なもののようです。説明を読むと、つらい思い出を書いたもののようで……。興味は湧かないことはないのですが、今自分があまり精神的に頑丈ではないので(この状況ですし、そういう方は多いかもしれません)、つらい思い出に同調してつらい「体験」をすることになるのでは、という思いもあります。そして何より、あえてそういう思い出を掘り起こす必要があるのか……何かのけじめとしてなされたのか、企画を持ち込まれてそうなったのか、はたまた別のなにかがあるのかはわかりませんが。

封印したい思い出というのは、誰でもあると思います。振り返らずに逃げなくちゃいけない人間関係というのももちろんあります。自分もたくさん逃げ出しました。スマートにできることではありませんし、「友達100人できるかな」が理想とされる社会では肯定されにくい行動なので、あとから自分を責める気持ちになることもあります。が、たぶんその(自分を責める)必要はないのだと思います。ない方がましな人間関係はたくさんありますし、思い出すことが立ち直ることを妨げるなら、それを(少なくとも一時的には)避けるのも方法の1つ、というのはたいていの共通理解ではないでしょうか。

(その意味で、つらい災害の映像を「忘れるな」と毎年流し、報道機関が大きく扱うことには複雑な気持ちを持っています。今後の備えという意味ではもちろん風化させてはいけないと思いますが、日本の報道は感情的なところに拘泥する傾向があり、3/11前後は「この時期テレビを見たくない方も多いのではないかな」と思いました。これはまた別の話☆)

…じつは昨年、自分が感じる生きにくさの一部に「HSP」という名前がついていることを知り、それだけでずいぶん楽になりました。(人口の五分の一はお仲間だそうで、自分だけじゃないというのは救いです)これについてはまた機会があれば別に書きますが、尊敬する萩尾先生が人間関係に失敗して「お別れした」体験をされた、と知ることが、心を守るために何かから逃げた自分を頭ごなしに責めず、受け入れることを助けてくれるかもしれない……という思いもあります。

でも、この本を書くために体調を崩されたという萩尾先生。商業出版のある一面を見る思いがして、なんだかやりきれないものがあります。ご自身も「埋めた過去を掘り起こすことが、もう、ありませんように。」と書いておられますが、お書きになったことがある種の解放につながりますよう、もうつらい思いをなさいませんよう、ファンの1人としても祈ります。


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【余談・私事のアレコレ】

…さて、「持っていかれた」理由になった『ユニコーン』の「鞄」の大ゴマですが……じつは半分「あちゃー」とも思いました。自分のある作品の続編で、似た趣向のシーンを考えていたので。さっさと形にしないとこういうケースがどんどん出てくる、という教訓ですね。(ほんとに多いです。こういうこと。のろまなので(^^;))そちらはできるかどうかわからないんですが……とにかく今やってることを進めなくてはです。

それと……じつはこの『ポーの一族』との再会の場となった横浜西口のダイヤモンド地下街(今はザ・ダイヤモンドでしたか)、数年前にここの食品街でバイトをしていたことがありました。入った店舗にちょっとブラックなところがあって、トラウマができてしまい、辞めたあとも地下街自体を避けるようになっていました。(いつも流れる音楽を聴くだけで気持ちがふさいでしまうので)

昨年その会社が(コロナ禍のせいかもしれませんが)倒産して、もちろん店舗もなくなり、こういっては失礼ですがほっとしました。やっと自分の呪縛も解けてきて、地下街が以前の自分にとっての「西口」に戻ってきそうな気がしています。(横浜、ではなくなぜか「西口」と呼ぶんですよね。うちだけではない横浜市民の習慣らしいです)じつはその精神的な「リハビリ」(?)も兼ねて行った西口でしたが、有隣堂も気楽に見るのはものすごく久しぶりで、自分のルーツをいろいろ確認することにもなり、感慨の深い体験となりました。

2021/03/21

皆川達夫さん②:思わぬところで「貴腐人」に深い意味が

 ①からだいぶ時間が経ってしまいましたが、昨年亡くなった音楽学者皆川達夫さんについて、音楽以外の気楽なミーハー話です。亡くなった後ににわかファン状態でいろいろ調べ回った時、ワインにも造詣が深くて『ワインのたのしみ方』という本を出していらしたと知り、いきおいで古書をゲットしまして……。ちなみに自分、まったくの下戸でアリマス。なのでほんとに、純粋に(?)ミーハーな興味で読ませていただきました。


入手した皆川達夫さんの『ワインのたのしみ方』


…なんですが、まず驚いたのが、注文時は文庫だと思っていたのに届いたものが新書版だったこと。奥付は昭和48年です。どうやらこれがのちに文庫化されたようなんですね。アマゾンレビューにあった「ワインを注いでもらっている皆川先生のお茶目な笑顔の写真」は文庫版で新たに入ったものなのか、手元の本にはそれらしき写真がないのが残念です。(写真は入っているけれど注いでもらってはいない。後年のお姿で「お茶目な」お写真て見てみたい❤)でも、逆にある意味貴重ですし、著者近影もお若いです! 

『こころの時代』にちらりと出てきた若かりし頃のお写真もイケメンでびっくりしましたが、いやー、やはり中年期もハンサムさんだったんですね~♪(個人的にはおじいちゃん然としてからのルックスのほうが惹かれますが……)おまけにこの裏表紙、推薦文を書いてるのはなんと芥川也寸志さん!音楽つながりですね。こちらも時代感が……テレビでよく拝見していた頃のお顔が目に浮かんで、なんだかたまらんです。


裏表紙、著者近影のお若い皆川達夫さん❤

中の文章は、時代を反映した感じでホンワカしつつも、「ワインは女性のようにデリケート」なんてくだりは、一見紳士的なようで、今の感覚だと隠微な女性差別感が……まあ時代ということで。とにかく、保管や飲み方のお作法から生産地別の特徴、小説に出てくるワインなんてのまで、初心者には充分すぎる内容で楽しく読めました。

でも自分にとってもっと楽しかったのは、皆川さん自身の好みやこだわり、キャラクターが透けて見えるところ。「ワイン」より「葡萄酒」というほうがお好みだったり、新聞漫画の「フジ三太郎」を「フジ・サンペイ」と間違ってたり(作者のサトウサンペイさんとブレンドしてしまったようで……いいんですよ無理して一般人のふりなさらなくてもー!(笑)てか編集者さん気づいてあげて☆)……「なんでもかでも英語風に表現しなくては気が済まない最近の一般的世相はあまり好感がもてず」なんてあたりも、なんだか(失礼かもしれませんが(^^;))かわいらしいです❤ ちょっと引用させていただきますね。

「肉の焼き方を聞かれたから〈生焼きでお願いします〉と注文すると、必ず〈ロウですね〉と返してくる。こちらも、それなればこそというわけで、〈そう、セニアンで〉とフランス風に答えると、急にどこの方言かといわんばかりの軽べつした顔をする」(p.29)

――大人げないですよっ!(笑)…というか微笑ましくて……よほどムカッとしたんでしょうねえ、こんなとこに書くなんて(笑)。ともあれ、フランス語など縁もない身には上記の小話も雲の上感タップリですし、紹介されている本格的なワインは当時今以上に贅沢品だったんだろうなあ……というのがひしひしと伝わってきました。当時ワインブームがあったらしいですが、ザ・庶民な自分などには(たとえイケるクチだったとしても)別世界です☆

でもワインについては、大好きな英国俳優ジョナサン・アリスさん(勝手にイアンシリーズの主人公のモデルにさせていただいている方)もワイン好きでいらっしゃるので、ちょっと憎からずな印象もあります。

読んでいて食べ物とワインの組み合わせがおいしそうでたまらなくなり、ワイン感のあるぶどうジュースでチーズを食べてみたりしました。自分にはこれが精一杯。下戸にとってはワインだろうがショーチューだろうが、アルコール飲料は「決して行けない憧れの国」です。

ワインのような風味だった濃厚赤葡萄ジュース

そして……タイトルにしましたが、『お酒が飲めないあなたのためのエチュード』という箇所でおすすめされていたソーテルヌの白ワインを調べていて、「貴腐ワイン」なる言葉を初めて知りました。本書には「ここのブドウはおそく摘み取られるために、一種のカビが繁殖し、腐敗状を呈します。〈高貴なる腐敗〉と言われるものですが…」とあります。

…ええっ、「貴腐人」てここから!? うわー、めっちゃシャレたところから持ってきてたんじゃん! 「高貴なる腐敗」ってのもなんか合う!?……と、驚くと同時に大納得!(なじみがない方のために……ある程度年齢がいった腐女子のことを「貴腐人」と呼ぶ場合がある……そうです。自分は言いませんけれど(笑))…

……だったんですが、調べてみると「貴腐人」の語源を「貴腐ワイン」からとした説明は見当たらないんですよね。やはり純粋に「貴婦人」に掛けただけだろうか。でも、偶然にしてもこんなイメージが連想可能だと思うと、言葉に味わいが増します。(笑)

…皆川達夫さんのお名前をこんな切り口で取り上げるのは畏れ多いんですけれど、自分のお里がお里なもので……(身もふたもないです(^^;))。皆川さんのお名前で検索なさってお読みくださった方がいらしたらごめんなさい。でもほんとにびっくりしたので。(音楽のお話や見つけたリンクなどは、「皆川達夫さん①:「ムジカ・ムンダーナ」なすれ違い」にまとめております)

*       *       *

【余談】さっき触れたジョナサン・アリスさんですが、出演なさっている映画『ビバリウム』が日本でも公開になりました! いつも映画ではカメオ程度の出演だったりするんですが、今回は脇ながら予告編でもかなり登場なさっていてワクワクします。主演はこれまた好きなジェシー・アイゼンバーグくんですし、見に行きたいんですけど……うーん、ちょっとまだ劇場に行くのはためらわれます……レンタルDVDを待つことになるかなあ……。(涙)

ついでですが、以前アリスさんがお父様から受け継いだワインセラーについてお書きになった記事を、こっそり拙訳でご紹介したことがあります。少し長いですがいいお話なので、よろしければどうぞ。



2021/03/14

春近し:新芽とつぼみと植物の時間感覚

大雨の翌日です。まさに「一雨ごとに」で、庭に出たらいろんなものがむくむく伸びていたので写真を撮りまくってしまいました。特に、昨年おっかなびっくり剪定したものが再生していることに感動しました。剪定の効果を感じられるのは翌年なんですね。この時間感覚、なんだか腑に落ちるものがあって、大事にしたいなと思いました。つい「すぐに成果を」と焦ってしまいがちですよね、われわれ人間は……そんな時に思い出したい感覚です。

そんなわけで、今回はものぐさガーデナーの親ばかフォトアルバム(笑)です。新芽やつぼみが出てくるこの季節、まだ虫は少なくて「これから」の想像が気楽にふくらみます。見ていて一番ワクワクするのは今かもしれません。


一昨年地植えから移したクリスマスローズ。
葉切りが遅れ、そのせいかどうかわかりませんが、
昨年より花は小振り。でもたくさん咲いてくれたので、
玄関を飾ってもらっています。
中が種の態勢になってるのでそろそろ切らなければ…。

大好きなツルニチニチソウ。
日照時間が少ないところに置いてますがつぼみが出てきました。

昨年買ったカシワバアジサイ。
足元からも新芽が出ていてワクワクします!
ずっと憧れだったのでうまく咲いてほしい☆

昨年密集していた忌み枝を剪定して
スカスカになっていたツツジ。
だいぶ葉が茂って枝先に新芽がたっぷり出ています。
昨年はほぼ咲かなかったのですがはたして今年は…。

昨年寄せ植え用に買ったラナンキュラス。
ずっと葉ばかりで諦めてましたが、
二年目も咲いてくれそうです。

昨年剪定したボタン。丸坊主になったので
心配していましたが、もりもり芽が出てきました。

100均球根のチューリップ。水栽培用の余りを鉢に植えてました。
先日葉がかじられたので、ヨトウムシ系とナメクジの
対処をしました。花は無事に咲いてくれますように…。


これも昨年買ったポリアンサ。元気がなく養生していましたが、
つぼみが見えてきました。

今年鉢で買ったミニスイセン。花が終わったので
茎ごと切り、地植えに移しました。

一番暗い玄関横のアジサイ。昨年は花が付かず、
教本を参考に剪定だけしてました。
今年は咲いてくれないかなあ…。


レッドロビン。昨年病気だらけだったので
丸坊主にして肥料やゆるい消毒などしてました。
新芽が明らかに増えてるので嬉しいです。

昨年剪定した枝を挿しておいたアジサイ。
足元にめっちゃ小さい芽が出ているのを発見して大興奮!(笑)

上のアジサイの鉢の全体図。
4号鉢ですごく小さいです。

昨年100均のタネから育てたラベンダー。
てのひらサイズの素焼き鉢に一つずつ分けて冬を越しました。
どうやら苗っぽくなって足元にもむくむくと新芽が。

昨年トマトやカボチャのエリアにコンパニオンプランツとして植えた葉ネギ。
主役が消えた後放置していたらそのまま冬越しして太い苗になってました。
想定外の収穫。(笑)しばらく楽しみます。

先日剪定したモミジ。高さとお隣への張り出しを抑えるため、
かわいそうですが上~右方向に延びる大きな枝3本を幹の際から切りました。
(これがけっこう重労働!植木屋さんはすごいです☆)
枝ぶりを楽しめるよう全体に手を入れたので、
葉が出るのが楽しみです。




毎年出てくれるスイセン。つぼみが見えてきました。

昨年切り花から挿したスプレーギク。
冬も枯れずにそのままでした。かなり育ちました。