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【イベント参加予定】2024/5/19 文学フリマ東京38 / 2024/5/26 COMITIA 148

2023/10/27

ユトリロ展と「百貨店の展覧会」

目次:(ページ内リンクツールがないのでご了承ください☆)

  • 高島屋のユトリロ展
  • 「白の時代」と「色彩の時代」
  • 戦利品
  • 巡回予定
  • 「初めてのユトリロ」を求めて
  • 「37年前」の半券
  • 「百貨店の展覧会」…横浜高島屋の思い出
  • (余談)横浜の「西口」


高島屋のユトリロ展

先月のお彼岸中のことになりますが、お寺帰りに横浜の高島屋「モーリス・ユトリロ展」を見てきました。ここんとこ展覧会など足を運ぶ余裕はなかったので、前日は遠足前の子供みたいにワクワク(笑)。ちょっと足は痛かったけれど、久しぶりに贅沢な時間を味わいました。


チラシとチケット半券。
作品リストも無料でいただけました♪

じつは学生時代に初めてユトリロの絵を見たのも横浜高島屋で、それから好きな画家のひとりになりました。懐かしさと思い入れと、芋づる式にちょっと感動した展開もあったので、いろいろ書きます。

展覧会の告知ページなどはこちら。今は動画でもPRするんですね。

パリを愛した孤独な画家の物語 生誕140年 モーリス・ユトリロ展



「白の時代」と「色彩の時代」

ユトリロは、たいてい描いた絵の特徴によって年代分けして紹介されます。漆喰の表現が魅力的な「白の時代」は人気があり、彼の代名詞ですね。自分もこれに惚れました。

今回見て思ったのは、「白の時代」の絵に描かれている曇天が、自分にとってすごく魅力的であること。曇天だから影がないんです。むしろ全体がぼんやりと光を放っているようにも感じる。現実にこういう天気の日はありますよね。子供の頃から好きで、なんとなく魂がふわーっと飛んで行ってしまうというか、茫洋とした気持ち良い感覚になります。その感覚が「白の時代」の絵にはあるんですね。漆喰はもちろんですが、この空の表現も大好きです。それで空に注目して見ていったら、絵によって空に光沢があったりなかったり……なかなか面白く感じました。

「色彩の時代」の絵になると、絵の中に陰影がくっきり描き込まれます。強い光が差した表現——つまり「日光が差すようになった」んだな、と気が付きました。単に使う絵具のバリエーションが変わったのではなくて、ものの見方=意識、目に入るもの、表現したいものが変わったのが感じられる。これは自分にとって大発見です。

展覧会は解説によって背景を知るのも楽しいですが、実物を見て自分で発見・解釈するのは何よりの醍醐味です。たぶん上記の切り口は(私が気付くくらいなので)ありふれた解釈なのだと思いますが、今回の展の解説は人物の掘り下げ——タイトル通り「パリを愛した孤独な画家の物語」——に軸足があったので、これについては言及されていませんでした。むしろ「観客が自分で発見する楽しみ」を残しておいてくれたようで、ちょっと嬉しく感じました。


戦利品

さて、出口のお楽しみショップコーナーです。カタログは購入しませんでしたが(個人的には市販の代表作が入ってるもののほうが好みで、それならいつでも買えるので…)、たぶん20-30分くらい狭い売り場を行ったり来たりして、不審な客を演じてしまいました。(^^;) 実は昔の展覧会でポスターになっていた絵と似たものの額絵が欲しかったんです(はっきりとは覚えてないのでイメージですが、青っぽい屋根の縦長の建物の絵)。でもその絵は額絵サイズがなくて、比較的大きめのカードはあったものの、それは発色が黄色っぽくて、漆喰の感じが好みでない。発色が好みなのは小さなポストカード。でも少しでも大きいのを飾りたい…と行ったり来たりしたのでした。

で、結局選んだのはこの3つです。


戦利品の額絵、ポストカード、トートバッグ。
額は手持ちの100均フレーム。お世話になってます♥


こだわった絵は発色をとってポストカードにし、額絵は別のを選びました。そして、いつもは紙もの以外はあまり買わないんですが、なんとトートバッグを。日頃の自分なら手に取らない商品です。どうしたんだ私?(笑)

正直「ユトリロの絵をシルエットにされてもなー…」とも思ったんですが、ちょうど買い物用の100均トートが傷んで買い替えたいと思ってましたし、展覧会自体に「久々の"自分にご褒美"」感があったので、「日常使いでこの幸福感を思い出せるもの」を手元に置きたくなったのだと思います。

カタログと同じ(か、ほぼ 同じくらい)の価格だったので、100均トートからはずいぶんなグレードアップ。使うのに気が引けたくらい(どんだけ貧乏性?(笑))ですが、使ってみたら感触が良く丈夫で、持ち手の長さ、サイズ、マチも格段に使いやすい! とても気に入りました。絵柄もパッと見アート系グッズとはわかりにくいのがかえって気楽で、毎日キャベツだのゴボウだの入れて使い倒しています。(笑)


巡回予定

今回の展覧会は国内にある作品を集めたものだそうで、展示には母シュザンヌ・ヴァラドンと芸術家たちの人物相関図や、彼女の作品も少しありました。11月に京都に巡回するようです。(記事で横浜の展示にも触れられているので、同じ内容だと思われます)人気がある画家ですから、他にもあるかもしれませんね。秋にはちょうど「気分」なイベントだと思います。お近くの方はぜひどうぞ。


「初めてのユトリロ」を求めて

帰りの道々、「初めて見たユトリロ展」はいつ、どんな内容だったんだろう…と気になりました。高島屋さん自体のユトリロ展は10年ぶりだそうで、自分の記憶にあるのはそれよりかなり前なのです。「自分の学生時代」の年代を手掛かりに…と検索してみたんですが、「百貨店の展覧会」の履歴を一覧できるところってなかなかないんですね。(高島屋さんのサイトにあるかと思ったら無かった☆)それにこれだけ時間が経ってしまうと、ネットで探せる情報も少なくなるみたいで。なんでもネットでサクッと見つかると思ったら大間違い。改めて痛感しました。

ともかく、「そのものズバリ」ではない情報をチマチマつなぎ合わせて推理する……という流れになりました。まあこういうのは楽しいんですけど♪

…で、ネットオークションに出ているカタログなどから辿っていき、「なんとなくこれでは」というところまで絞り込みました。こうなるとカタログの実物が見たい! ダメ元で行きつけの横浜市立図書館のサイトで検索してみたら……なんとその時のカタログが収蔵されていました! うひゃー! さっそく取り寄せをお願いしました。それがこちら♥


図書館にあった「昔行ったユトリロ展」のカタログ。

中に巡回記録が♪

会期は1985-86。確かに横浜高島屋に来ています! ああ、これだったんだ! 中を見ると、使い込んだパレットの上に絵が描かれているのがあって、見たことを思い出しました。他は(正直似たような印象の絵が続くので)「これ」という記憶はなく、ひたすら漆喰の白に心奪われたことしか覚えていません。でもカタログを買えなくて、安めの額絵を買ったような記憶はあります。しばらく部屋に飾っていたと思います。今は行方不明ですが……。(なんとなく斜めから見た構図、という印象だけおぼろげに…)当時は100均のフレームなんて手頃なものはなかったので、そのまま飾って傷んで処分したのかもしれません。


「37年前」の半券

びっくりしたのは、中にチケットの半券が挟まっていたこと!見に行った方が挟んだまま寄贈したんですかねぇ……。


カタログに挟まっていた「37年前の」チケットの半券!

なんだか貴重なので、同じぺージに挟み戻して返却しました。じつは私が借りてる間に、予約が入って延長できなくなったんです。でもこれはむしろワクワクしました! きっと今回の展示を見た方ではないかと思ったので。そしてユトリロの画集なら他にもたくさんあるのに、わざわざ「百貨店の展覧会の図録」を取り寄せたということは……もしかしたら、私と同じような経緯でこれを突き止めた方かもしれません。なんだか嬉しい! この半券も、同じように感慨を覚えたりなさるのではと思います。


昔のカタログの表紙(おそらくポスターもこれでは)と、
今回その「おぼろげな記憶に似た印象」で買ったポストカード。
なんとなく似ている…?
(AIの学習テストみたい…(笑))

図書館で検索ヒットした時は「まさかデパートの展覧会のカタログが図書館にあるなんて…!」と感激しましたが、巡回を見ると美術館も含まれているんですね。自分が勝手に百貨店と美術館に線引きをしていただけでした。そういえば高島屋は「ギャラリー」ですが、東口のそごうにあるのは「そごう美術館」ですもんね。(こちらのほうが新しいのでいまだに「最近できた」印象なのですが、やはりいろいろお世話になっています♪)そう思うとますます、駅直結で簡単に行ける百貨店がこういう場を提供してくれる伝統をありがたく感じます。


「百貨店の展覧会」…横浜高島屋の思い出

思い返すと、ユトリロ以外にも「横浜高島屋の展覧会で初めて見た」ものがいくつもあります。特に印象に残っているのは辻村ジュサブロー展。子供の頃に人形劇『八犬伝』『真田十勇士』に親しんでいたのでその流れで行きましたが、展示では初めて見た「王女メディア」のド迫力の人形と、その展示スペースに平幹二郎さんの台詞(平さんが演じた舞台の衣装がジュサブローさんだったのです)が流れて圧倒されたのを今でも覚えています。ジュサブロー展は何度かあった気がしますが、この時の展示は(「メディア」のコーナー見たさに)複数回見に行きました。

「メディア」の舞台はその後も生で見る機会がなく、テレビの劇場中継か何かで映像を見ただけでしたが、いまだに平さんというとまず最初に思い出すのは「王女メディア」……それもあの展覧会での「台詞回し」の迫力です。スリコミってすごいものですね。(ちなみに母の持ちネタの一つが「独身時代に平幹二郎を街中で見かけたことがある」で、平さんが話題になるとまずこれを聞かされ、私は「王女メディア」を持ち出します(笑))

まだ歌舞伎を見始める前で、「そういうテイストのもの」に憧れる下地はあそこでできたのかもしれません。「中年男性が女性キャラを演じる」というねじれの魅力に目覚めたのも。(「王女メディア」はいわゆる「女形」に比べればかなり特殊な例だとは思いますが…)

また、展覧会ではなく小さな映画の上映会もあって、たしか初めて『スティング』を見たのも高島屋でした。あのどんでん返し! 興奮を今でも思い出します。

まだインターネットもレンタルビデオも自分には身近でなかった時代でした。遠くの美術館に行けなかった高校生にとって、学校帰りに歩いて行けた横浜高島屋の展覧会は新世界の窓でした。「友達と学校帰りに見に行き、そのあと興奮しながらおしゃべりする」楽しい経験と、さまざまな芸術体験を与えてもらいました。趣味・嗜好の形成に間違いなく影響していると思います。誇張でなく、当時の自分に芸術教育を施してくれた貴重な場でした。

昨今は百貨店が苦戦しているとよくニュースになりますよね。物販はたしかに通販でもっと安く、いろいろなものを物色できます。だけどこういう「体験」は、やはりリアル店舗ならでは。デパートに限らず、当時(80-90年代くらい)は文化的な催しが企業さんの勲章みたいで、「メセナ」(今や死語?)なんて流行り言葉のようによく聞きました。やはり世の中に余裕があったんでしょうね。

百貨店ということで言えば、俳優の大川橋蔵さん(亡くなった時の追悼放映『雪之丞変化』がきっかけで若い頃ハマりました☆)が、インタビューで「(特に買い物がなくとも)時間があると百貨店をぶらぶら歩き回る」と話していらっしゃるのを読んだ記憶があります。古書の『近代映画』か何かだったと思います。上質なものを見て回るだけで勉強になるのだと。なるほどと思い、自分も通勤で横浜を通っていた頃によく食器や工芸品のフロアを回り、タダで目の保養をさせていただいていました…。あまり吸収はできていませんが、商品だけでなくディスプレイも素敵で、少し日常を脱する感覚が味わえました。(服に興味がないのでその方面は行きませんでしたが…(笑))

今は美術館も収蔵品をネットで公開してくれたりしますが、こういう「リアル」の場ってまた違う体験です。社会人になって以降も購買客としてはあまり貢献できてないのが申し訳ないですが(^^;)、百貨店さん、がんばって生き残ってほしいです。特に横浜の高島屋さん。自分や家族にとって、今でも「にしぐち」「たかしまや」「日常の一歩外にあるちょっとした贅沢」の象徴です。地下の食品フロアで「御座候」を買うだけでも盛り上がりますが(大判焼きみたいなやつ。デパート土産にしては安くて家族も好きなので、行くとよく買います)、これからもいろんな展覧会を開催して、自分のよーな地元庶民に文化を届けていただきたいです☆


(余談)横浜の「西口」

…そうそう、余談ですが、横浜(駅周辺)に行くことを「西口に行く」と普通に言っています。いつだったか、テレビ番組でご当地ネタ的に出てきて、ちょっと愉快に思いました。そしてこの話題になると、昔横浜行きの相鉄の車内に貼ってあったポスターに「今日は西口に行って…」(ひらがなだったかも?)というコピーがあったのを思い出します。駅ビルのレストラン街か何かのポスターでした。それまで家族の口癖だと思っていたのが「みんな言うのかー!」とその時知りました。

東口にそごうができる前は、商業的に開けているのが圧倒的に西口周辺だったので、「横浜(駅)に行って買い物や食事を楽しむ」→「西口」、というイメージになっちゃったんでしょうね。ただの出口の方角なのに、「西口に行く」にはかすかな高揚感が漂います。(うちだけ?)

自分は父親(横浜生まれ)がそう言ってたので、子供の頃は「にしぐち」という地名のように感じていました。他の駅にも「西口」はあるよね、と頭の中でつながったのはずっとあとのこと。(笑)懐かしい思い出です。(^^)

2023/10/21

『なぜ私は私であるのか』:もしくは「なぜ図書館の本は"読み切れずに返す直前"に俄然面白くなるのか」

《追記》少し長いので目次をつけました。
(bloggerはページ内リンクツールがないのでそこはご容赦を☆)

  • 前説と「最後から読む」
  • アニル・セスさんの書き方に慣れる
  • 「あのドレス」と「ファイ」
  • 「図書館本は"読み切れずに返す直前"に面白くなる」法則

前説と「最後から読む」

7月に日本で行われたALIFE 2023 という学会の公開イベントで、テッド・チャンさんとの対談をオンライン視聴させていただいたアニル・セスさん。その時著書を調べてみたら面白そうで、かつ図書館にあったので予約し、かなり待ってようやく順番が来ました。人気の本みたいです。

(学会自体のご紹介はこちらに書きました。
テッド・チャンさん備忘録:ヴァニティフェアインタビューと学会講演(2023/7/26)


『なぜ私は私であるのか: 神経科学が解き明かした意識の謎』
(アニル・セス著・岸本寛史訳・青土社)
[>amazon]


…なんですが、受け取ったのは不運にもJ庭直前! しかも市内の市立図書館全館に対して一冊しかない! 順番待ちの方々がいらっしゃるので延長はできません! うー!(^^;) 

で、イベント後にようやく本格的に読み始めたのですが…イベント疲れもあってなかなか入り込めず苦戦。「テーマは面白そう」で理解できた部分はものすごく触発されるのですが、専門用語が多くてかなり集中力を要するのです。これは挫折返却かなー…とあきらめかけたんですが、せっかくこんなに待ったのにもったいない。で、こういう時の裏技、「最後の章から読む」をやってみました。

そしたらビンゴ!入れました!(笑)よくこういうことがあるんです…思考回路が逆さまなんですかね。(笑)


アニル・セスさんの書き方に慣れる

最終章(正確には「エピローグ」の前の章「機械の心」)を読んだらすごくおもしろかったので、読み止しの箇所に戻り、再びゆっくり読み始め、だんだんセスさんの芸風(?)というか、書き進め方のクセがわかってきました。ポンと一般人には馴染みのない用語が出てきて、それがどういうことかを示す記述はあとに出てくる。(用語の説明という感じではなく、適用例を描写する感じ)

数学用語なんかだと、普通に使われる言葉が別に特定の意味を持ってたりするんですね。あぶねえあぶねえ。(笑)素人の自分には電子辞書さんにそばにいてもらわんと。もちろんまったく見たことないものもあります。「尤度(ゆうど)」なんて聞いたこともない……英語だと"likeliness/likelihood"だそうで、これなら「ありそう度」的なイメージが普通に伝わりますね。ガクモン系の用語は昔からこういう例が多い気がします。(日本語の固定訳だと意味不明の専門用語が、英語だとカジュアルでわかりやすかったりする)


さて、セスさんの書き方に戻りますが…感触としては、わかんない言葉も曖昧なまま読んでいくと、なんとなくイメージできるようになる。パーツを一つ一つ理解しながらパズルを埋めていく…というタイプではない(ように自分には感じられた)ので、「一つ一つ理解」して積み上げるつもりでいると「わかんねーよ!」「なんだよいきなりそれ!」とストレスが溜まってしまうんです。理解を一部「保留」してボンヤリ読んでいくと、急に「あ。こーいうことか☆」とイメージが下りてくる瞬間がある。そのA-HA体験(今時言わない?)がけっこう癖になって、「残りの部分も読みたい」と引っ張ってくれました。


「あのドレス」と「ファイ」

じつは学会後に偶然テレビで見たドキュメンタリーで、セスさんを見かけていました。(タイトル忘れてしまいましたが、BS1でやってた脳関係のやつ)番組で取り上げていた「ドレスの色が青と黒に見える人と白と金に見える人がいる写真」の話なども本に出てくるので、ところどころデジャブが。(「ドレス」の写真は、本の中でウィキのURLが紹介されていました。 >The dress  …私には「白と金」に見えるんですが、どう見えます?)


でも読んだ中で面白かったのは「ファイ」という章。「"全体は部分の総和以上"になること=意識」という、いきなり言われるとイメージしにくい仮説を取り上げてるんですが、これが読んで「ない」ときに「あ」の瞬間が来まして。すごく「それむしろ流行りの考え方では?」みたいな感じになりました。

"全体は部分の総和以上"自体はかなり共有されている概念だと思うんですが、それ(「全体」になった時に増えるもの)が多ければ多いほど「意識的」と言われるとイメージのギャップがあったんです。でも「あ」の瞬間に「感触」として捉えることができました。

この本、パッと見は専門用語や数値やグラフがあって理系的に見えるんですが、理解する段になるとこういう「感覚的」なものが多い感じがします。ま、テーマが「意識」ですしね。


別経路では異なる切り口で触れていた概念が、数学とか神経科学の用語で記述されてるこの感じには、「抽象的なレベルで」なんとなく覚えが……。そうだ、まさにテッド・チャンさんの作風! 自分の言葉で言うと、「カタいパーツ(数学や物理や一見無機質なもの)」で「ソフトなもの(情緒や感情、美しさ、有機的なもの)」を表現する、あの感じ。対談ではあまり噛み合っていなかったように見えたんですが(ごめんなさい、私が英語リスニング難民なせいかもです☆)こういう面で通底するものがあるんだな、なんて思ったり。


専門的な用語が多いので、パラパラッとめくっていると正直少しとっつきにくそうな印象があります。でも『エクス・マキナ』とか映画の話もよく出てきて、そこは映画好きには入りやすい。やはり一般向けに書いてるんですね。セスさんの持論を追う面はもちろんありますが、途中寄り道的に紹介される話題・別の方の研究が百花繚乱で、「へえー!」と思えるものがたくさん。むしろそちらがメインの「博覧強記」系に近いかも。「刺激を受け、視野を広げて頭を柔らかくする読み物」という感じです。読んでて「自分の考え」がわーっと湧いてきて、メモがいっぱいになりました。(たぶん夜中に読んでたせいで暴走したのもある(笑))


「図書館本は"読み切れずに返す直前"に面白くなる」法則

しかし。あー、もう返却日[※この記事を書いた10/19]です。 昨夜2時頃まで夜更かししてラストスパートしましたが(というより、読み始めたら止まらなくなったのです)、読了の割合は全体の半分くらいでお返しすることになりました。いつも思うんですけど、なんでこういう段階になって急に自分の食いつきがよくなるのか……。これで購入すると冷めてしまったりするんですよね。これってずっと「買うといつでも読めるから相対的に価値感が下がり後回しになる」のかな、と思ってたんです。でも違う要素もあるように思い始めました。むしろ購入した本「完全に理解しなくては」というプレッシャーがあるんです。投じたお金を無駄にしたくない。だから、今回のような「わからないところは保留してボンヤリ読んでいくべき」タイプの本だと「これはダメだ」と性急に思ってしまう。「わからない」の状態でいる途中経過が耐えられないんです。(お、これぞ「ネガティヴ・ケイパビリティ」の問題ですね~(笑))


一番プレッシャーなく気楽に読めるのは、まさに「図書館で借りた本を読めずに返す直前、急いで目を通している時」。本への期待度というか、「この本からこれくらいのものは得たいという欲・得なきゃという義務感」が下がっているんです。あるいは意識されない状態になっている。同時に「手放す惜しさ」もある。だからこそ、「こんなに面白い所があるならもっと早くみっちり読むんだったー!」と思える……たぶん。だって、そもそもそれが実行できない状況だし、その義務もないんですから……気楽の極致ですよね。

(この洞察は昨夜読んでるときにひらめいて、メモに入れた殴り書きが元です。のーみその関係ない所が活性化される読書って私には理想です♥(笑))


*     *     *


いずれにしろこの本、「ゆっくりと寄り道を楽しむ本」で、タイトルや構えから想像するような「著者の仮説を知識として取り込むための本」からはちょっとはみ出す本でした。少なくとも自分には。返したらもう一度予約入れちゃおうかなーとも思うんですが…予約待ちの方の人数を見ると、たぶん次に来るのはまた2か月くらい先。そのときにこういうものを楽しむ余裕があるかどうか。(ちょうどまた12月のコミティアやコミケがあるので…(^^;))同じテンションでないのは確実だし、その時自分が何に興味を持ってるかもわからない。うーん、買っちゃおうかなー…。(他で散財した後なので悩む☆)こう思うと、本との出会いも(タイミングを含めて)ほんとに一期一会ですよねー…。


*     *     *


「最後から読む」で読んだ「機械の心」の章で、すごく印象に残ったところがあったので読書ブログにも記録しました。

牛乃の読書ノート:「最高の倫理とは予防的な倫理である。」


ご紹介したところとは別ですが、「脳オルガノイドの農場」を作りたがってる研究者さんがいるって、かなりショッキングでした…。(詳しくは本をお読みくださいませ。ソフトカバーですが索引完備(←これ大事☆)のしっかりした本です♪(^^))


ところで原題は"Being You: A New Science of Consciousness"。やっぱり英語だとカジュアルだなー☆


2023/10/09

J庭54:ご報告と感謝とディスプレイ裏話

10/8のJ.GARDEN54、無事に参加することができました。スペースにお立ち寄りくださった皆様、ありがとうございました!いろいろご報告します。会場にお越しになれなかった方もよかったらぜひ。


スペースの様子

11時の開場時にはまだスタンドの仕上げや見本のカバー付けが終わらず。でも開場直後に忙しいサークルではないので(てか1日中ヒマ(笑))、なんとか飾り付けることができました。特設ジャンル「ホラー・オカルト」で(これでも)大いにはりきったディスプレイです☆


スペース全景。
今回は机の前にポスター貼るのは我慢しました。
敷き布も黒のサテン地に。少しは落ち着いた…かな?



新刊について

『脳人形の館[新装版] 』コーナー。
小説と今回編集した別冊ふろくです。

新刊として『脳人形の館[新装版]』を発行したので、100均小物を駆使して飾ってみました。でも花はやはり後ろに壁がないと色に埋もれてしまいます。ましてや私が後ろに座るのでは台無し感100%…(涙)。でも工夫するのはめちゃくちゃ楽しかったです♪

「ハンド君」(笑)の右にある緑色の紙は、当日スペースに用意されていた特設ジャンル用のPOP。いやー、郵便物に入っていなかったので今回はないのだと思ってました!きっと土壇場で作ってくださったんですね。机上は詰め詰めで計画してしまったのですが、せっかくなのでなんとか間に押し込みました。特設ジャンル「ホラー・オカルト」の良い記念です♪

新装版は、お言葉から旧版でお読みくださっていたと思われる方がご購入くださり、感謝に堪えません。(真正の新作でなくてすみません💦)別冊ふろくに些少ですが新コンテンツを加えておりますので、少しでもお楽しみいただけたら嬉しいです。(本人はコピー誌脱却で背表紙に文字が入ったことに大感激しております(^^;))

うちはSNSの活動が苦手で、二次を離れてからはあまりネットで反応をいただくことはないのですが、イベントでは必ずお立ち寄りくださる方々がおられます。お声がけはご本人にとってはウザいかもしれないので、気がついた場合でも(テンパって意識が及ばないこともありますが)遠慮しております。でも心から嬉しく思っております。

(SNSのリツイートなどでさりげなくご支援くださる数名の皆様にも、改めて御礼申し上げます。SNSは本当に苦手になってしまって、お礼の作法もわからないので、ご無礼があったらどうかお許しください。本当に感謝でいっぱいです)

余談ですが、最近Amazon(kindle)でもフォローしてくださっている方々がいらっしゃることを知り(オーサーセントラルに加わった新機能をようやく見たのです)、まったく予想していなかったので驚きました。アマゾンのフォローはほぼ新刊情報のためなので、いつか作品の形でお礼ができるよう頑張ります。(たぶんホームズやイアンなどのフィクションでチェックしていただいた方が多いのでは、と想像しております…)



ポスタースタンドのディスプレイ。
新装版と付録のPRです。
なにが「禁断の」じゃい☆(我ながら(笑))

…さて、J庭に戻りますが…今回コンナコト↑をしましたが、「美老人」を前面に出すのは寛容なJ庭でも相当難しいなあ……と思いました。(いや、問題なのは美老人ではなく私のアプローチと力量なのですが☆(^^;))瑞々しい萌えを求めておいでになるお嬢様方が、コンナモノにお目を留めるはずもなく……オノレのマイノリティっぷりを痛いほど再確認いたしました。でも、毎度ですが「需要があるからではなく供給がないから作るのが同人誌」という名言もありますし。そこは自分の嗜好と技量の限界が持つ宿命かな、と腹をくくります☆(開き直りともいう)

会場の当日企画では、ネットの新刊情報掲示板のプリントアウトの他、事前にPDFを送った小説1ページ目を掲示してくださる「お試し☆小説出会いの広場」というのもあり、自分も楽しく拝見してきました。ただ、「お試し…」は1サークル1作品だと勝手に思い込んでいたので、複数作品上げているサークルさんを見つけて「そうだったのかー☆」とちょっとショックでした。(笑)こういう企画はありがたいです。これからも続けてほしいし、企画立案したスタッフ様に大感謝です!


既刊について

既刊も(うちの基準では)わりと満遍なくお連れ帰りいただけ、ご新規様とのご縁ができたことを嬉しく思います。そうですよね。どこで聞いたか忘れましたが、「本は出会った時が新刊」なのです。自分にとっては見慣れたものでも、新鮮に読んでくださる方がおられるかもしれない、との思いで既刊のみでも参加しています。もしお気に召していただけましたら、ぜひほかの本もお試しくださいませ。


…大失敗

…ただ、その既刊のうち3冊について、午後1時過ぎまで見本誌を出すのを忘れるという大失態を演じてしまいました。(わりと会場早々に、そのうちの一冊のホームズ小説が売れたので、嬉しくて意識が飛んでしまったようです(^^;))今回は新刊以外は個々にパックした状態で持ち込んだので、その3冊は中がまったく見られない状態でした。それで「お手に取ってどうぞ~」なんて言っていたのですから、穴があったら入りたいとはこのことです。もし見本を見られなかった(…けど言うほどの事ではないし)とあきらめた方がいらっしゃったら申し訳なく…というかお手に取っていただく機会を自分のせいで失った無念さに歯噛みするばかり。情けないです。これからは気を付けます。


ディスプレイ裏話


ディスプレイに使った「ハンド君」。
絡ませた100均のフェイク植物は
つるの曲線が見事でとても気に入りました♥


気を取り直しまして、(自分が大いに楽しんだ)ディスプレイのお話など書かせていただきます♪

今回使ったリストバンド付き「ハンド君」は、じつは昔SF大会で「SFいけばな」という企画展示をさせていただいた時に作ったものです(黒のサテンもその時のものを洗濯)。展示ではピーター・カッシング主演の映画『フランケンシュタインの逆襲』(1957) をテーマにした作品に使いました。(今回は立てましたが、元は横にして切り口から生花をたっぷり生やしていました(笑))

『脳人形の館』の二人には切断四肢の再接合を共同研究した過去があり、「人形の腕」という言葉も出てくるので、イメージとして…。(でも冷静になると、J庭で「コンナモノ」を見てそそられる方はいないかも…(爆))


ご覧の通り手のデッサン模型なのですが、手首を革でくるんでいるのは別のフランケン映画『フレッシュ・フォー・フランケンシュタイン』へのオマージュです。(『アンディー・ウォーホルのフランケンシュタイン』『悪魔のはらわた』の邦題もあり。映画自体はほぼ「悪趣味」で言い尽くせる作品なので、「若い頃のウド・キアーのお変態演技が見たい♥」とかでなければあえておすすめしません(^^;))

ハトメをつけて紐を通して…とけっこう手間がかかったので、捨てるのが忍びなくそのまま物置に眠らせておりました。活かす機会ができてよかったです♪



…そんなこんなでいろいろ楽しんだJ庭でした。お連れ帰りいただいた本が楽しんでいただけていますように。

我らが神殿ビッグサイト。
帰りに振り返ってパチリ。外は雨が降り出していました。
連休のせいか鉄道のイベントをやっていて、なかなか盛況でした。


新刊の通販や電子版の方針などについては、準備が整い次第サイトなどでお知らせさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。


当日の持参品はこちらの通りです。

直近イベントお品書き(&通販・kindle版リンク)

2023/10/06

10/8開催 J.GARDEN54参加のお知らせ

直前ですみません!こちらのブログできちんとお知らせしておりませんでした💦

J庭、無事に参加の運びとなりました。特設ジャンル「ホラー・オカルト」で参加させていただきます♪

J.GARDEN公式サイト

配置は【み11a SUSSANRAP】です。

ジャストフィットな特設ジャンルにちなみ、しばらく在庫なしだった耽美風マイルドホラー小説(ピーター・カッシング当て書き)を新装版で復刊しました。タイトルは旧版から「恐怖!」を取り『脳人形の館』。(kindle版と同じになりました)16ページのカラー別冊ふろく付きです。(価格はまだ迷っているのですが、1200円前後になるかと思います)

「別冊ふろく」は、改めて見ると内容が単体では成立していないので、当初考えていた別冊ふろくのみの無料配布は行わないことにしました。(もしも当てにしてくださっていた方がいらしたら申し訳ありません💦)kindle版も表紙を差し替えるつもりなのですが、「別冊ふろく」電子版を作るかどうかについては、もう少し考えてから決めたいと思います。決定したらお知らせさせていただきますね。


『脳人形の館[新装版]』。表紙から「ピーター・カッシング生誕100周年」を外し、
ロゴをシックに(?)して漫画・イラストを外しました。
 
別冊ふろく表紙。本体で削除した漫画・イラストに加え、
「蔵出しパイロット漫画ラフ」を収録しました。

ふろくのほうは一昨日自宅に到着しました!小説本体は当日会場搬入なのでドキドキしております。これをセットにして販売します。


到着した「脳人形の館」別冊ふろく。
試作中のディスプレイと共に。


サイトに当日のお品書きページをご用意しております。サイト内でお試し読みもできますので、ぜひご利用ください。

直近イベント お品書き(&通販・kindle版リンク)


入場にはパンフレット『GARDEN GUIDE』が必要なので、事前購入なさった方はどうぞお忘れなく。これが入場証代わりになります。(事前購入するとwebカタログが使えたりして便利ですね♥)詳しくはJ庭公式サイトをどうぞ。

急に涼しくなりましたね。会場は状況によって暑く(熱く?(笑))なったり寒くなったりするので、調整がしやすい羽織りものがあると便利だと思います。

ではでは、会場でお待ちしております♥


*     *     *


編集作業中のアレコレなどは、新設したサイト内ブログにわりとマメに上げております。(このせいで告知をした気分になってしまったんですね(^^;))舞台裏日記みたいなものでちょっとこことはノリが違いますが、よかったらご覧くださいませ。

Now Working On!~現在ンなことやってます~