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2023/09/17

寅さんと『おかしな二人』:ハーブ・エデルマン

 昨夜テレビで『男はつらいよ 寅次郎春の夢』をちらりと見かけたら、珍しく外国人俳優さんが。「絶対何度も見ている…っ!」と思った顔でした。でも作品が思い出せなくて、出てきたのはぼんやりと「刑事ものの主人公の同僚的な?」みたいなイメージだけ。映画での顔や雰囲気は思い出せるのに……。

で、どうにも気になって仕方がないので、allcinemaさんでキャストを確認。なんとジャック・レモン『おかしな二人』に出ていたハーブ(ハーバート)・エデルマンでした!(名前は覚えてなかったけど「あの人かー!」と大コーフン!)

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エデルマンさん。こう見ると「いかにも山田組」な雰囲気はあるかも…。


『おかしな二人』は、ともに離婚後の友人同士——家事好きで神経質な男(ジャック・レモン)と正反対のずぼら男(ウォルター・マッソー)——が同居するコメディ。ジャック・レモンが大好きなのですが、その出演作の中でもひときわ好きな作品のひとつです。エデルマンは彼らのポーカー仲間の一人を演じていました。


右は豪華な特典に釣られて背伸びして買った海外版DVD。
左はその後日本で出たDVD。両方宝物です♪
(音楽がまた大好き♪残念なのは日本盤に特典がないこと。
字幕入りで入れてほしかった…!)


設定だけ見ると腐女子な私の琴線に触れそうなのですが、不思議なくらい「萌え」は皆無。(そもそもジャック・レモンに「萌え」は求めてないな(笑))でもものすごくチャーミングな映画です。この時代の「ニューヨーク感」、原作ニール・サイモンの味でしょうか。レモンはいつもの通りで今見るとやり過ぎ感もありますが、マッソーとのコンビネーションでうまく調和しています。他の作品でもいいコンビを見せてくれます。(『お熱いのがお好き』のトニー・カーティスといい、レモンはあのテンションをうまく受け止めてくれるバディ役がいる映画だとちょうど良いのかもしれません♥)


寅さんは最後のあたりしか見られなかったのですが、どうもエデルマンはアメリカ人営業マンで、さくらさんに岡惚れする役だったようです。(今自然に出ちゃったのですが、「岡惚れ」ってのも今どき寅さん映画を語る時くらいしか使わない言葉かもしれないですね(笑))コメディ映画の傑作である『おかしな二人』を山田洋次監督が見ていて、抜擢につながったのでは……なんて想像が広がりました。(もちろん出演作は他にもたくさんあるのですが、素人ファンのありがちな発想です(笑))思えば『おかしな二人』も、アメリカ映画にしては「人情」が人を振り回すコメディです。


そういえば、『おかしな二人』でエデルマンが演じた男の職業は警察官でした。(「刑事ものの主人公の同僚」ちょっと近かった?(笑))ポーカー仲間のレモンが離婚後の鬱で自殺しかねないと心配し、彼がトイレに行けば「(バスルームには)剃刀の替え刃がある」と言い——レモンは『アパートの鍵貸します』では「剃刀を隠す側」だったので、ファンはくすぐられます♪——、行方をくらましたレモンをぼやきつつもパトカーで探し回る、なんてシーンがありました。

山田洋次作品の「出てる人がみんな人情で動く」ところは、自分には「非現実的なファンタジー」と映り、じつはそこがちょっぴり苦手でもあります。でも大好きな『おかしな二人』が、意外にも似たトーンを持っていたのだと初めて気づきました。

笑わせながら下品に流れないところも似ていますね。…『おかしな二人』はバーのシーンに露出度高い女性が出たり、「ポッポちゃん」姉妹とのダブルデートなどありますが、セクシーな流れにはなりません。寅さんも水商売の女性がよく出ますが、下品にはならない。寅さんて好きな女性ができると「つきあいたい」ではなく、いきなり「所帯を持ちたい」なんですよね(笑)。世相もあるでしょうが、誠実で猪突猛進なキャラクターを表してるんでしょうね。それにしてもいきなり「所帯」は飛躍しすぎだといつも思うのですが(笑)……(そこも含めて「おかしい(面白い)」)


『寅次郎春の夢』は終盤しか見られませんでしたが、エデルマンが日本の居酒屋で歌を歌い、酔っぱらって寅さんと歩くシーンなんか見てると、アメリカ人ながら見事に「山田洋次映画」のキャラクターで(監督してるんだから当たり前ですがプロだなー☆)、海外ロケと思われる最後の出演シーンもそのトーンでした。ずいぶん前の映画ですが、確認したら1979年作品。その頃の日本の大衆映画で、こういう海外俳優さんの起用(ビジュアルとして日本在住の外国人さんを使うのではなくて、がっつり「外国の俳優さん」の起用)があったんだなあ……というのも感慨を感じたところでありました。


寅さんはわりと昔から海外にもファンがいるそうですね。大昔の映画雑誌で、たしかマーゴ・ヘミングウェイマリエル・ヘミングウェイ(あいまいでごめんなさい💦)が寅さんのファンだとのことで、「寅さんのポスターを貼った部屋でキモノ風のローブを着ている」写真を見た気がします。最近も、たしかフランスで特集上映があり、異例の集客ぶりだったという記事を読みました。そういう方々の目には、「アメリカ人俳優があの人情世界に溶け込んでいる寅さん映画」ってどう映るんだろう。ちょっと頭を覗いてみたいなぁ……なんて思います。