『ブラック・シー』(2014)
なにより貫録の出たジュード・ロウに刮目。もともと「顔が整ってるのはわかるけど自分好みではない」(ごめんなさい(^^;))という距離感で眺めていた俳優さんですが、労働者階級のアウトロー的キャラクターがなかなか似合っていて、自分内では株が上がりました。
(ちなみに過去に一番似合っていると思った役は『A.I.』のエスコートロボット。作品自体もう埋もれているかもですが、お見事だったと思います♪)
『プレッシャー』(2015)
奇しくも両方美形俳優として鳴らした方が転身(?)して、こういうやりきれない物語の労働者を演じているところに、良い・悪いという話でなく、時代や時間の流れを感じた2本でありました。日本で自分が見て特に印象に残っているイメ―ジに基づいたことなので、もちろんいろんな役はなさっているのでしょうけれど。
ちょうどEU離脱なんかもあったので……映画が作られたのはその前ですけど、経済的な状況の流れが映画の企画にも影響してるんだろうなー、なんてことも頭をかすめました。「こういうキャストのこういう作品で観客が入る=共感を呼べる」という読みがあるはずですから。
…両方俳優さんの演技等は文句なしなのですが、映画としては満足度がいまいち。「こうすれば面白くなるかも」を脳内シミュレートしてみるとすごく勉強になりそうです。
『For Those in Peril』(2013)
今回の映画は初めて漁に参加して遭難し、一人だけ生き残った青年の物語。低予算映画で、イギリスのインディペンデント・フィルム・アワードを受賞しています。
生き残りの彼が周囲から受け入れられず、彼自身は一緒に漁に出た兄の死を受け入れられない、という苦悩が、少し幻想的な描写を交えて描かれます。子供の頃に母に聞いたおとぎ話を繰り返し思い出し、兄は死んでいないという考えにとりつかれ、やがて精神のバランスを失っていきます。その過程で、生前の兄との関係も複雑なものであったことがわかっていくのですが……。
圧巻はクライマックス。一見救いのないエンディングにつながる行為なのですが、これが彼にとってはまったく別の意味を持っている、というのがわかった瞬間に、鳥肌が立つような感動がありました。ここはネタバレしちゃ台無しなので、いつか日本盤が出たときのために書きません。が、ラストはじつに独創的です。かつそれまでのトーンとのつながりが難しくもあります。こういう手法は好きで自分でも時々やりますが、難しいです(^^;)。映画のメジャー系作品だったら、この終わり方は受け入れられないかもしれないです。独立系ならでは、と言えるかもしれません。
「血なまぐさいシーンやきつい言葉遣い」があるため18歳以上向け、となっています。(マッケイ君はそこそこ脱いでますが、特にエロティックではありません)自分にとってはこんなリサーチをしなければ絶対見なかった一本なので、幸運な出会いでした。漁のシーンはないですが、そういうのはドキュメンタリーがたくさんありますので……むしろ陸地でのシーンや風景が貴重でした。内容的にはこの題材からの予想を覆す独創的なものだったので、賛否両論は予想されますが、日本でも字幕入りソフトが出てほしい。マッケイ君の人気が上がれば将来あるかも、と希望を持っておきます。
タイトルの『For Those in Peril』は、直訳すると「命の危険にさらされている者たちのために」。海軍やその他、海で亡くなった人のお葬式などで歌われる賛美歌の一節だそうで、他でもタイトル等に引用されているようです。作中では主人公の兄のお葬式のシーンでこの讃美歌が歌われます。英語版wikipediaによると、海軍出身のアメリカ大統領のお葬式などでも演奏されてきたそうで、歌のタイトルはいろんなバージョンがあるとのこと。歌詞は海難からの守護を神に願う内容です。映画のテーマはもろにそこではありませんが、自然を前にしてひたすら無力である人間、という立場を改めて認識させてくれる歌でした。科学技術の進歩で大きく変わってきていますが、漁師さんや海で働く人たちはそういう場所が仕事場なんだな、と、頭でなく心で感じることができました。
インディペンデント系作品で応援したい気持ちもあるので、予告編を貼らせていただきます。マッケイ君は熱演で、彼のファンの方は見て損はないのでは、と思います。マッケイ君て顔のタイプが誰かに似てるとつねづね思ってたんですが……あ、佐々木蔵之介さんだ!(…似てません?(笑))