先日美老人俳優アーネスト・セシジャー(「セジガー」の表記もあり)出演の『魔の家』を見たので、セシジャーが演じるプレトリアス教授目当てで見た(笑)映画の感想を、サイトの塩漬け記事(2010年9月)から発掘です。監督のジェームズ・ホエールは、『ゴッド・アンド・モンスター』でイアン・マッケランが演じたホラー映画で有名な方。映画の通りゲイだったそうです。
映画は、フランケンシュタインが書かれたきっかけの集まりと似た状況・・・バイロンとシェリーと、フランケンを書いたメアリー・シェリーが嵐の夜に集っているところから始まります。バイロンが「あの恐ろしい物語を書いたのが君とは」とメアリーに色目を使い、メアリーが「続きをお聞きになりたい?」と語り始める・・・という序幕。古い映画なのにしゃれたオープニングだなあ・・・と、そこからもう感服してしまいました。
前作(未見)のラストは原作とは違い、怪物とフランケンシュタインが燃える風車の中で最期を遂げる・・・というものだったらしく、そこから始まります。余談ですが、フランケンをネタにした最近の映画で、当たり前のように風車が出てきた意味がやっと飲み込めました。このバージョンへのオマージュだったんですね。セットの雰囲気も、風車に押し寄せる群集のイメージも、そっくりでした。
続編が作られたわけですから二人とも死んでるわけがなく(笑)、フランケン(追記・うっかり書いてしまいました。モンスターのほうです。男爵でなく(^^;))は逃げて、捕まったり、盲目の老人にかくまわれたりします。この老人のシークエンスは原作にもあるもので、それを膨らませていますね。いいシーンになっています。
一方フランケンシュタイン男爵は、結婚相手のエリザベスの前で息を吹き返します。そこへ訪ねてくるのが、今回自分がチェックした目的のプレトリアス教授。独自に生命の秘密を解明したのですが、さらに研究を進めるために、男爵の協力を求めます。(この「研究成果」の映像が素敵!どっちかというとホムンクルス系の研究をしていたようです。しかし「哲学教授」と紹介されてるんですが・・・昔の学者さんはオールマイティーですねえ(笑))
タイトルの「花嫁」は、正確にはフランケンシュタインの嫁のエリザベスではなく、モンスターの嫁として女性の人造人間を作る、ということです。まあ、そうとしか解釈できないタイトルですが。男爵の名前がモンスターの名前と混同されるのは、すでに映画の中から始まっていたんですね。
男爵は協力をしぶります。前作は見ていませんが、キャラクター的には原作に沿った作りのようてすね。ハマー版の「私の創造物」に執着する男爵とは違い、モンスターを作ったことを後悔しているナイーブな人物です。一方プレトリアス教授は、次の段階に研究を進めることに執着していて、ハマー版の男爵はこちらを継承している印象です。(顔も似ているし(笑))
じつはこの映画の紹介を読んだ『マッド・サイエンティストの夢―理性のきしみ』には、この映画そのものが同性愛のメタファーに満ちている、というようなことが書かれていたのですが、なるほど、プレトリアスの言動を深読みすると、そんな感じもします。フランケンと二人きりで話すために、新妻のエリザベスを上から目線で追い出すところとか、いい感じ(?)です。そして「二人で新しい生命を作りだそう」、と持ちかけるわけですから。(笑)
プレトリアスはほんとに魅力的で、特に死体置き場でうってつけの体を見つけた後、即席の食卓にしゃれこうべを置いて、高笑いしながら祝杯をあげるところでノックアウトされました(笑)。スリムな体に黒装束というのも、カッシング版男爵をホーフツとさせて素敵。(影響の順番でいえば逆なんですが(笑))
昨日はカッシング丈やプラマー様を引き合いに出しましたが、動いているのを見ると、どうも別の誰かにも似ている・・・ふと気がついたのは、最近NHKの番組CMでよく見るミス・マープルでした。目の感じ、その動かし方がよく似ています。・・・つまり、かわいいです。(笑)
残念なのは、プレトリアスが出ているのはこの作品だけらしいということ。もっと見たかったなあ・・・・でも、ある意味そのキャラを継承したのがハマーのフランケン男爵なわけで、有名なユニバーサル版のフランケンシュタインの世界と、ハマー版の世界が頭の中でつながりました。満足です。思ったより、ほんとに楽しめる仕上がりでした。画質はやはり残念な感じだったので、デジタルリマスター版とかないのかなー・・・。
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過去記事と別に映像を追加しておきます。ヘンリー・フランケンシュタインを訪ねて新妻を追い出し、一緒に生命を創ろうと持ちかけるプレトリアス教授のシーン。深読みを誘います♪
しゃれこうべを置いて高笑いの食卓はこちら。(笑)