2024/07/15

『11人いる!』再訪


『11人いる!』文庫版と、再読のきっかけになった
『SF少女マンガ全史』


図書館で 『SF少女マンガ全史:昭和黄金期を中心に』という本を借りてきました。たぶん書評か何かで知って予約したものかと……やっと順番が来まして(^^)。素直に前から読んでたのですが、ちょっと待ちきれなくて(笑)一番思い入れがある萩尾望都先生の章に飛びました。

…で、読んでる途中でたまらなくなって、手持ちの文庫版11人いる!を掘り出し読み直すことに。あはは。(^^;)
……いやもう、一気読みでした! 
一緒に収録されてる続編『東の地平 西の永遠』、スピンオフ『スペース ストリート』まですべて。こんなに没入して漫画を読んだのは久しぶりです。というか、漫画自体読むのが久しぶり。いい時間でした……❤ 改めて気づかされたこともいろいろ出てきたので、感想など書きます。


【以下ちょっと長いので目次】

  • ジェンダーからの自由
  • 大国と小国・政治の視点
  • 英語版の刊行予定!


ジェンダーからの自由

宇宙大学の受験生たち(星ごとの「人種」はさまざま)が、宇宙船での集団最終テストで遭遇する非常事態の物語。なんですが……印象に残るのは、やはり雌雄同体「見た目美少女」なフロルというキャラクターの設定。大人になって女性になるか男性になるかを選べる、という。確かにこの男女平等な視点がこの時代に描かれていたのは革新的だったのかも。

でも、この「ジェンダーに縛られない自由さ」は、ある意味では子供だった頃の自分も持ってるように誤解していたので(笑)、周囲から浮くことがありました。だからフロルは、「社会からジェンダーの拘束をはめられる前」の女の子のメタファーのようにも自分には見えます。この感覚はわりと普遍的にあるんじゃないかな……だから昔はそれを特別なものだと思っていなかったのかも。その「女の子の原初感覚」を、SF漫画の設定として昇華・表現(そしてしなやかに主張)したのが萩尾先生の独自性であり、自分たちが惹かれる理由かもしれません。理屈でなく、「根が自分とつながっている」から。これは女の子(あるいは「元」女の子)でないとわからないかもしれませんね。

フロルとコンビになるタダとのやりとりは、コミカルな表現が多いんだな、というのも再発見でした。シリアスな部分とギャグな部分がミックスするのは、振り返るとこの時代特有になっている気がします。(同人漫画でよくあった「作者の墓」的なギャグをさしはさむ感覚は、今は同人誌でもない・あるいは少ない気がします)


大国と小国・政治の視点

その他のストーリーは忘れているところが多かったし、「今のご時世・今の自分」で読むからこそ感じることがたくさん! 昔はピンときてなかったところがいかに多かったかわかりました。続編の『東の地平 西の永遠』では、政治的な切り口、小国と大国の関係もわかりやすい形で描かれていて、現在の海外ニュースにも当てはまる構造があり、より濃密な読書体験になりました。ただそのへんの展開けっこう早いですし、コドモ感覚だった頃の自分にはついていけず読み飛ばしていたと思います。今の年齢で読み直してわかったことですね。いまさらですが、漫画も再読するといろんな気づきがあります。(そもそも断捨離を生き抜いて残った本はすべて「再読したい」のですから、再読の時間をとるのはムダどころか理にかなっているはず!)


英語版の刊行予定!

で……以前『スター・レッド』を大判で買い直した時(▶当ブログ「『スター・レッド』再び」)にも思ったのですが、「英語版ないのかな?」と思いまして (こういう教材なら引き合わせも苦にならない!(笑))、アマゾンを検索。そしたらなんと、9/24に刊行予定だとわかり狂喜しました! 海外ストアで先に見つけたんですが、日本ストアはなぜか今は「一時的に在庫切れ」(発売前なのに?)。これを書いている時点では予約もできない状態です。でもとにかくチェックしておくことにします!(思えばこのタイミングで刊行情報にアクセスできたのも「呼ばれたかな?」って嬉しさが♪)

They Were 11! 

同じ表紙の日本語大型本も既刊であったので、これの英訳になるのかな? 老眼が進んだせいで(^^;)文庫版は読むのがつらかったので、こちらもほしくなりました。

萩尾望都スペースワンダー 11人いる! 復刻版

『スター・レッド』の英訳はまだかな……ほんとにあの作品のスケールの大きさは世界中の方に読んでほしいです。きっと実現しますね。うんうん。



…『SF少女マンガ全史』に戻りますが……もちろん他の章も楽しみです!子供の頃から主にコミックス派(限られたお小遣いで)だったので網羅的な読み方はしていないのですが、他で今特に懐かしく思うお一人が山田ミネコ先生。作品名は覚えていないのですが、毎年夏休みに母方の実家に泊まりに行ってたときに、寝る部屋に積まれてた漫画雑誌で知ったのでした。そういえば山田先生のコミックスは手元にない。マイブーム再燃と古書探索サイクルのきっかけがもらえるかな? 期待して読み進めます。(^^)

(ただ、回顧的に読もうとしている立場からは、鳥獣戯画から語り起こされているところなど、「どういう読者層が想定されているのかな……?」と違和感のある箇所がいくつかあったことも書いておきます。あ、もしかしたら絵巻物から始めるのは海外向けの目配り? 翻訳の予定があるとか?……まあそれはまた別の話。通読したら筋が通るのかもしれませんね。話が飛んで失礼いたしました☆)