2013年2月17日日曜日

二次大戦直後の「現代版」ホームズ/『シャーロック・ホームズの殺しのドレス』(1946)


マーク・ゲイティス兄スティーヴン・モファット様がよく言及なさっている、ベイジル・ラスボーン「現代版」シャーロック・ホームズ。ワンコインDVDで買っていたのをやっと鑑賞しました♪(『殺しのドレス』と聞くとブライアン・デ・パルマのサスペンスものを思い出しますが、これは別物(笑))

結論。なるほど、こりゃー面白いや!(笑)…映画としてどうかというと、正直「退屈はしない」というレベルで小粒ではあるんですが、SHERLOCKのアプローチのヒントになった、というのはすごく納得でした。原作ネタのアレンジの仕方とか、非常にしゃれていてテンポも速い!ただ、原作ネタうんぬんという部分は原作を知っている観客しか楽しめないので、映像作品として評価する上では刺身のツマではあるんですが。(…原作を知らずとも充分すぎるほど楽しめるSHERLOCKは、やはり段違いの出来映えだなー…と再認識しました☆)

ストーリーは、「ダートムア刑務所」(笑)で作られた三つのオルゴールが競売にかけられ、競り落とした人物から、謎の人物がそれらを奪おうとする…というもの。原作の『バスカヴイル家の犬』、『六つのナポレオン』、『ボヘミアの醜聞』などの要素が織り込まれてはいますが、脚色というよりオリジナルのストーリーです。たくさんの原作ネタを織り込みながら、全体としては特定の原作エピソードに対応しない、『SHERLOCK』の『グレート・ゲーム』と似たやり方。時代設定も「現代」(1946年作品なのでその当時)なので、馬車の代わりに車、電気ももちろんありますし、ホームズも普通のコート姿。ナチスの使ったガス、なんてのも出てきます。1946年と考えるとまさに「ホットな」話題。たぶん公開当時に見たホームズファンは、現代の私たちがSHERLOCKを見たときのように「そうきましたか!」を楽しんだんだろうな、と思います。(笑)

オチの部分がやや簡単すぎるというか、まあお手軽ではあるのですが、充分楽しめました。上映時間は69分。テレビの帯ドラマのように、短いインターバルで新作映画がかけられた時代のものと思えば、この「お手軽さ」は許せるものです。テンポもサクサクしていて、ほんとに退屈しません。

ホームズ役のベイジル・ラスボーンは美声で、BBC現代版やグラナダ版など、美男タイプのホームズに慣れた目で見ると、落ち着いた「大人」感がありました。逆に細やかな心理描写はほとんどないキャラクターになっています。これはけなしてるのではなくて、映画の尺に合ってると思いました。

ワトスンはナイジェル・ブルース。ちょっと抜けてる「古きよき」ワトスンで、けれど彼の無意識の言葉からホームズがヒントを得る、といういいコンビネーションになっています。ピンと張りつめた個性のホームズに対して、ガス抜きの役割を担っています。
個人的には、グラナダ版前半でワトスンをやったデヴィッド・バークや、マーティン・フリーマンの現代版のジョンのような、「シャーロック・ホームズと対等に丁々発止を演じる賢いワトスン」がとても好きです。でも、このワトスンもとてもいい。ホームズとの「おっさん二人」の生活が、すごく自然に見えるんです。

とくに思ったのが、事件の聞き込みに行って店から出てきたところ。今会った人物について話しながら歩くだけなんですが、これがすごく自然でよかった…。ワトスンのちょっとぶっきらぼうなくらいの発音の仕方に、「気の置けないおっさん二人」のリアリティーが感じられました。いい意味で大味なんです。実際のおっさんのつきあいってこんな感じだよなー、という感じ。

ラストのシークエンスにサミュエル・ジョンソンとボズウェルが出てきたり(ボズウェルはサミュエル・ジョンソンの伝記を書いたことで有名な人で、ワトスンは「ボズウェル」と揶揄されることがありますね)、いろんなネタの仕込み方が、ホームズファンのゲイティス兄やモファット様にはたまらないだろうなあ…と思うと同時に、「この感覚を自分たちの作品の観客にも提供しよう」というヒントになったんだろうなあ、と、すごく納得できました。(余談ですが、このジョンソン博士の元住居を案内しているおじさんが、すごくコナン・ドイル似ています。わざと似せているジョークなのかどうなのかわかりませんが…(笑))

ジョンとシャーロックの、ある意味繊細で幼稚な(笑)色っぽい関係を深読みすることに慣れすぎた(?)身には、キャラクターの人間関係や心理より、プロットをさくっと楽しめるのが新鮮でした。これはこれで気楽でいいな♪なんというか、見ていて自分も「プロットを考える」モードになれるので、そういうことを考えたいとき、ウォーミングアップに見るには最適では。

…というわけでラスボーンのホームズ、たくさんあるらしいのでもっと見てみたくなったのですが、Amazonで検索するとコレクターズ・ボックスしか出てきません…しかもカラー化されたのと抱き合わせですごく高い。(^^;)モノクロでいいから、レンタルで手軽に見られるようにしてほしいです!なんか「もっと見たい」という気持ちにさせられました。


字幕無しですがYoutubeにも全編上がっています。




自分が買ったワンコイン版は今アマゾンで出てきませんが、
たぶんコレと同じもの。

別の俳優さんの廉価ホームズシリーズの巻末に、なぜか入っています。
(これ、25分のテレビシリーズだそうで、前に本屋さんで見て気になってました。
気楽に見られそうなのでセットの一つ目のほうを注文してしまいました(笑))



コレクターズ・ボックス。
カラー版とモノクロ版で『殺しのドレス』を含めた4作品が入っているそうです。



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