2015/05/22

腐女子目線の「絶食系男子」と「セロトニン」の話

ただ今、BL系小説のkindle化作業をしてるんですが(先日の鑑識さんベースの。えらく間口の狭い作りですけど、いちおうオリジナルなのでやりますー(笑))、あとがきで入れようと思ったイメージソースやら影響受けた情報やらがかさばってしまって、「どっちがメインだよ」という感じになっちゃったので(^^;)、そちらに入れるのは一部にして、ブログで吐き出そうと思います。(いろいろ目からウロコが落ちたので、記録しておきたくて!)

絶食系男子


で、まずは「絶食系男子」から。最初にこの言葉を見た記事では「草食系」の進化系という紹介で、二つの文脈がありました。

・経済的な事情などで女性とのつきあいから遠ざかる
・性的な事柄自体に嫌悪感を感じる

今検索してみるともっと応用(?)されてるみたいで、「ロールキャベツ」なんて言葉もありますね。(中身は肉食って意味?(笑))「添い寝友」はOKだけどそれ以上は面倒、なんてのも見かけました。

もちろん、ほぼすべてがヘテロのケースを暗黙の了解としていて、恋愛に興味がない男性、というくくりです。(少し前に見かけられた「非モテ系」とはちょっと違う感じ。…ちなみに女性の非モテにあたる言葉ってなんだろうなーと以前考えて、「非コビ系」という造語を思いつきました。まあ使う機会はないですけど(笑))

…なので、「絶食系男子を攻略するには」とか、「絶食系を装っているケースを見破る」とか、そういう切り口の記事がわりと目立つんですが…自分は腐女子なのでそのへんは興味なくて(笑)、逆に「絶食系男子」という言葉に妙な色気を感じたわけです。琴線に触れるというか、創作意欲が湧くというか。

新世代ゲイとデミセクシュアルの「セロトニン」欲求


…で、当然BL仕立てにする前提なので無理があるかな……と思ったところ、そうでもないんですねこれが。リアルのゲイの方にもあてはまると知ったのは、この二冊を読んでからでした。

LGBTってなんだろう?--からだの性・こころの性・好きになる性

オトコのカラダはキモチいい (ダ・ヴィンチBOOKS)

LGBTのほうは、以前アセクシュアルについて目からウロコが落ちた話でもご紹介したんですけど、その本に収録されてる実際のゲイの学生さんの声のなかにすごく印象に残ったものがありました。地方から東京に出たゲイの方で、LGBTの友達や仲間がほしくてアプリで探したのに、会うとどうしても肉体関係の流れになってしまい、仕方なく好きじゃない人ともやったり…という繰り返しでむなしくなったというようなお話でした。これは失礼ながら意外で…ヘテロで考えたら当たり前なのに、ゲイの人はたぶん「やりたい」が一番目にくるんだろうな、くらいに思ってましたから。それまで接していた情報が偏っていたんですね…。

もう一方はツイッターのタイムラインで知った本(鍵アカさんなのでRTとかできなかったんですけど、ありがとうございました!)で、内容的に18禁だと思いますが、腐女子である研究者さんと編集者さん、それにアダルトビデオ監督さんの対談をベースに、SMの女王様をやってる方とか、リアルにゲイの方とかをゲストに招いて話を聞いている、ちょいバイアスはありますがディープな内容。とくに男性の解剖学的な説明など、より良いBL(?)をめざす創作者さんには参考になるかと思われます。

で、ゲイの方をまじえた対談のなかにこんな会話があったんです。

堀川(ゲイの方)
「あ、でもそういえば、ゲイの若い子の中にも「アナルセックスは面倒くさいし、『射精しなきゃ』と思うと作業っぽくなっちゃうから、添い寝とかハグだけでいい」というタイプがいますね。僕は信じられないけど(笑)」

岡田(腐女子さん)
「私、直接的なセックス描写がない、気持ちの交歓だけで十分「やおい」として成立している同人誌とか大好きなので、そんな話を聞くとうっとりしますね……。でも堀川さんは、BLにも3Pで混ざりたいくらいですもんね(笑)」

二村(アダルトビデオ監督さん)
「添い寝とかハグは、セロトニンが出る系でしょう。特に男性は、勃起や射精にとらわれないセックスや快感も知ったほうが、幸せになれると思う」
(前掲書・第三章 新宿二丁目で考える――タチはどこ消えた? より)


…これ、前述の「絶食系」の一部と通じる価値観じゃないでしょうか。(「セロトニンが出る系」っていうのは、コーフン系じゃなくて安心する系の気持ちよさ…ということです)「セロトニン」ってキーワードだと思います。ガマンしてるんじゃなくて、それを求めるって感覚……「それでいい」じゃなくて「それがいい」。逆に言うと、セロトニンが出る系の、安心感を得るタイプの経験をする機会が欠乏している証拠なのかも……なんて思ったりして。

前に書いたアセクシュアル系の細かい分類のなかに「デミセクシュアル」っていうのがあるんですけど、これは

どのジェンダーの人に対しても性的に魅力を感じないが、情緒的に結びつきを持った相手に対してのみ性的に魅力を感じ、性的な欲望を持つ人。結びつきはたいてい恋愛だが、強い友情の場合もある。
(こちらの用語集より http://www.akanekodou.mydns.jp/~gid/glossary.html  )

ということだそうです。これって「セロトニン」ベースがないとそもそも欲望が起こらない、というケースも含まれるんじゃないでしょうか? なんか同じことが別の文脈で語られてる気もします。先ほどの、肉体関係じゃなくて友達や仲間がほしい、というお話もちょっとつながってくるような。

ここから先は個人的な印象ですが……昔ながらの「男らしさ」のイメージには、「セロトニン系の感覚」なんてほしいとも思わない、というのが暗黙のうちに含まれている気がするんです。ガツガツ、イケイケ、24時間戦えます、みたいな。そんなわけはないと思うんですけど、社会的な要請として。だからそれ(セロトニン系)への欲求を表に出すのは「新世代」と言えると思いますが、今までそれを表に出せなかった、ゆえにそれを表す言葉がなかった……というだけかもしれないですね。

『人生はビギナーズ』


唐突ですがここでもう一つ、思い出したものを。大好きなクリストファー・プラマー様が、『人生はビギナーズ』っていう映画でやった役なんですが…。高齢になって妻に先立たれ、自分も余命宣告をされてから「カミングアウト」するお父さん、という役でした。すでにいい大人の息子(ユアン・マクレガー)がそれにショックを受けたりしながら視野を広げていく、みたいな話だったんですが……たしかプラマー様が(名前で書くと変だ)恋人募集広告に書いてたなかに、「やさしく愛し合うのが好み」というのがあって。

高齢ということを差し引いても、なんだか印象的でした。思えばこれもコーフン系じゃなくて「セロトニン系」を求めてるということでは。映画ではほんとにやさしい、年下の恋人ができたりするんですが……「この恋人は金目当てではないのか」と勘ぐってしまう自分がケガレタ人間に思えました。(^^;)まあそれはさておき、そういう関係は先ほどの対談の腐女子さんも語っていたとおり、腐女子にはなじみのあるものなんですよね。ただ個人的には、それは女子がファンタシーとして思い描く範疇でしかない、と思っていました。それがじつは現実にもあるんだと思うと、JUNE系の創作にもバックボーンが増えて「自由に」なるなあ、という気がします。

*       *       *

うーん、やっぱり長くなってしまった。でも「セロトニン」というキーワードはここまでダラダラ書いてみるまで気がつきませんでした。書いてよかった…収穫です。作品コピーの材料にしよう。(笑)

…でもまだ書き足りないことがいろいろあるんですよね…。次は「歴史ライター」という設定をするうえで見つけたものなど書いてみようと思います☆